高度不妊治療(体外受精・顕微授精)について

現代社会はストレスが多いと言っても 誰も疑問を抱かないことと思います。
不妊治療はさらに大きなストレスがかかります。
ただでさえストレスを感じやすい現代社会で生活を営む上、なかなか子供が授らないとなると、ガンなどの命にかかわる病気の宣告を受けることと同じレベルのストレスを感じるようになると指摘する専門家もいるくらいです。
ストレスが原因で不妊になることは既に生理学的にも裏付けられており、不妊であることによるストレスが妊娠をさらに遠ざけることになるというのもうなずけます。
かの有名な黄帝内経にも、精神的に不安定では妊娠できないと書いてあります。
ストレス状態での身体のメカニズム
嫌なことに対峙した時、脳の中の、理性を司るところと本能に忠実なところとの間で葛藤が起こります。
そして理性が本能を抑え込んだときにストレス状態が発生します。
そうすると脳は“嫌なこと”に対して闘争、あるいは逃走するように、身体を臨戦態勢にします。
ストレス状態を感じ取ると、 脳幹にある“視床下部”というところが副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)というホルモンを分泌します。
そして、このCRHは下垂体に働きかけて副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌させ、ACTHは副腎に働きかけてコルチゾールを分泌させて、ブドウ糖生成を促し、ストレスに対しての臨戦態勢を取ります。
ところが、この状態が長引くと免疫作用を抑制し、同じく副腎皮質から分泌されるコルチコステロンというホルモンが脳の神経細胞の働きを抑制してしまいます。
さらにCRHは、自律神経のうち交感神経を活性化させ、副交感神経を抑制します。
これも身体を臨戦態勢にするためで、交感神経はノルアドレナリンを分泌、さらに副腎の髄質というところを刺激してアドレナリンというホルモンを分泌させます。
アドレナリンやノルアドレナリンはコルチゾールと同様、血糖値を上げ、心拍数を増やし、血管を収縮させて血圧を上げます。
このようにノルアドレナリン・アドレナリンは、お互いに協力しあって脳や身体に活動態勢をとらせる働きをするのですが、これが長期間に及ぶと疲弊してきます。
ストレスによって妊娠しづらくなるメカニズム
不妊が先でもストレスが先でも、ストレスによって妊娠への道のりは厳しくなります。
その理由は、ストレスによる脳と副腎の反応と妊活におけるホルモン分泌の反応に共通点が多いことです。
★ストレス時のホルモンの分泌経路
視床下部→〈CRH〉→下垂体→(ACTH)→副腎皮質
★毎周期の生殖機能を働かせるホルモンの分泌経路
視床下部→(GnRH)→下垂体→(FSH・LH)→卵巣
視床下部、下垂体は共通しており、最後が副腎か卵巣かというところに違いがあるだけです。
平常時は生殖機能をしっかりとコントロールしているのですが、過度のストレスが長期間に及ぶと自分の身体の緊急事態に対処する生体反応を最優先し、生殖機能を含む他の日常的な生命活動が犠牲になってしまいます。
一方の自律神経ではストレスによって 交感神経が活性化され、副交感神経が抑制されてしまいます。その結果、血管が収縮し、血流不良となります。
ある研究者は、副交感神経が抑制されることで月経血が逆流して子宮内膜症を起こし、血流障害が長引くことで子宮筋腫が出来やすくなり、さらには白血球が多くなることで卵管に炎症を起こしやすくなると指摘しています。
とても重要なストレス対策
アメリカで実施された調査でも、過度な不安や心配・焦り等の精神状態が体外受精等の不妊治療において、良好な卵子の採卵から採卵後の受精率、さらには胚移植後の着床率、妊娠継続率等すべての治療のステップにおいて、その結果に大きく影響を及ぼしていることが明らかになっています。
ストレス解放というのは簡単ですが、どのように解放するかが大切です。
私たちの用いる鍼灸やマッサージ、アロマセラピーは肉体だけでなく、精神面へも作用します。
じっくり行うカウンセリングやリラックスできる個室での対応もストレス軽減に一役買います。少しでもストレスを解放して妊活に取り組んでほしいと願っています。